
この記事は、妊+のstand.fm『妊活すっぴんトーク』で配信した内容をもとに、読みやすく編集したものです。
今回のゲストは、鹿児島県で不妊ピア・カウンセラーとして活動する外薗ゆかりさん。
藤岡麻美と同じく、不妊治療を経験し、子どもがいない夫婦として今の生活を送っています。
話のきっかけは、お盆の帰省でした。親戚に子どもが多い中で、
「自分たちだけ子どもがいない」と感じて居心地が悪かったこと。
「長男の嫁として役割を果たせない」と、誰かに言われたわけでもないのに、自分で背負っていたこと。
そして、不妊治療を終えた今も、羨ましさや切なさがなくなるわけではないこと。
それでも、時間が経ったからこそ見えてきたものもありました。
「諦めた」だけでは言い表せない、不妊治療を終えるということ。
その先の人生について、二人でゆっくり話しました。
ラジオを聴くような気持ちで、ゆっくり読んでいただけたら嬉しいです。
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『子どもがいる家族』が集まる場所に行きづらかった
お盆の帰省をきっかけに、話は「子どもがいない夫婦として、親戚の集まりに行くこと」へ。今では親戚の子どもたちを「かわいい」と思えるゆかりさんですが、以前は帰省すること自体が気重だったといいます。
ゆかりさん:
「今は全然ウェルカムなんですけど、40代半ばくらいまでは、やっぱり帰ることが気重だったかな」
藤岡:
「それは、帰ること自体が?」
ゆかりさん:
「そう。特に30代とか40代半ばくらいまでは、親戚の子どもたちもまだ小さかったりするから。兄弟の子どもたちも保育園とか小学生だったりすると、自分たちだけが子どもがいないっていうのが突きつけられるというか」
藤岡:
「そうだね。まさに私、今それだよ」
ゆかりさん:
「何かと子どもたちの話題になって、どうしてもその中に入っていきづらかったりするから。それは結構、居心地が悪かった」
ゆかりさんの夫は5人兄弟。親戚の子どもたちも多く、その中で子どもがいない夫婦は、ゆかりさん夫婦と独身の弟だけでした。
藤岡:
「独身の弟さんは、ちょっと心の救いだったりしました?」
ゆかりさん:
「そう。結構、私にとって心の救いだった。でも弟もやっぱり帰りづらかったのか、ちょっとずらして帰ってきたりしてた」

そして、ゆかりさんには「子どもがいない」ということとは別に、もう一つ、自分の中で勝手に背負っていたものがありました。
藤岡:
「5人兄弟ってめずらしいですね!」
ゆかりさん:
「そうなの。しかも夫は長男だから、長男の嫁としてのお務めを果たせないような気持ちに、勝手になってたね」
藤岡:
「そりゃなるわ。長男の嫁って、なんかちょっと背負う感じあるよね」
ゆかりさん:
「今思うと、夫の両親はそんなこと全然思ってなかったと思う。私に対して何か言われたこともないし、むしろお嫁さんとして可愛がってくれてたんだなって、今は分かる」
藤岡:
「でも、その時はそう思えなかったんだね」
ゆかりさん:
「そう。その時は必死だった。言われたわけじゃないのに、自分の中でそういう価値観があったんだと思う。勝手に背負ってたんだよね」
藤岡:
「やっぱり、旦那さんに兄弟が多かったら、自然と『子どもがいる家族』を思い描きますよね」
ゆかりさん:
「ものすごく思い描いてた。5人兄弟は無理だけど、2人は欲しいとかね」
藤岡:
「そうなるよね」
ゆかりさん:
「子どもがいるのが当たり前みたいな感じで、自然となってたんだよね」
誰かに求められたわけではなくても、「結婚したら子どもがいる家族になる」というイメージは、二人の中に自然にあった。
だからこそ、その当たり前が少しずつ揺らぎ始めたとき、二人は「なぜ子どもができないんだろう」という現実に向き合うことになります。
ここから話は、不妊治療を始めるまでの時間へと移っていきます。

『結婚したら子どもができる』と思っていた私たちが、不妊治療を始めるまで
結婚すれば自然に子どもができる。
そんなふうに思っていた二人。
ゆかりさんが不妊治療を始めたのは、結婚して3年ほど経った頃でした。それまでは、気になっていてもなかなか現実に向き合えなかったといいます。
藤岡:
「結婚して、最初の頃は自然と子どもがいる家族を思い描いてたんですよね」
ゆかりさん:
「そう。結婚したら必ず子どもができると、なぜか染み込んでいて。できないってことを思ってなかった」
藤岡:
「私も。想定してなかった」
ゆかりさん:
「1年経っても、2年経って、もう3年目かって…。気にはなってたけど、そこに向き合うのが怖くて、病院にはなかなか足が向かなかった」
藤岡:
「なんかさ、検査とかで原因があったらどうしようって、怖いですよね」
ゆかりさん:
「現実を見るのが怖かった。不調もないし、生理周期もちゃんとしてるから。だから余計にね」
そんな中、当時大阪にいたゆかりさんに、母親から電話がありました。
藤岡:
「お母さんから、なんて言われたんですか?」
ゆかりさん:
「『もう結婚して3年経つから、そろそろ病院行った方がいいよ』って、はっきり言われた」
藤岡:
「すごいね。お母さんも勇気いったでしょうね。それを言われたとき、どう思ったんですか?」
ゆかりさん:
「もう行くしかないっていう気持ちになった」
藤岡:
「やっぱり自分の中でも、ちょっと行って確かめたいみたいな気持ちはあったのかな?」
ゆかりさん:
「そうだね。もしかしたら子どもができにくいというか、何かあるのかなっていうのは思い始めてた。でも、気にはなってるけど認めたくないって思ってたんだよね」
藤岡:
「その『認めたくない』ところに、お母さんから強烈な後押しがあったんですね」
ゆかりさん:
「そう。母の言葉がなかったら、どうしてたんだろう。行かなかったかもしれないよね」
藤岡:
「それは大きいね」
ゆかりさん:
「大きかった。本当に、『この人が言うんだったら行くしかない』みたいな感じになった」
病院へ行くことは、ただ「不妊治療を始める」というだけではありませんでした。これまで考えないようにしていた「もしかしたら子どもができないのかもしれない」という現実を、初めて確かめに行くことでもありました。
そして、母親の言葉に背中を押されて踏み出したその一歩が、ここから始まる不妊治療と、夫婦で向き合う時間につながっていきます。
期待と不安の間で、治療中は『心を無にする』しかなかった
不妊治療が始まると、今度は「治療を受ければ授かれるかもしれない」という期待と、「もしダメだったら」という不安の間で、何度も気持ちが揺れるようになります。二人が振り返ったのは、判定日を待つ時間や、クリニックで結果を待つときの、あの独特な緊張感でした。
藤岡:
「治療中って、クリニックに入ったら、もう心を無にする感じじゃなかった?」
ゆかりさん:
「そうそう。なんか、ちょっと麻痺させないとっていう感じだった」
藤岡:
「私も、クリニックに入ったらBGMに集中するとかしてた。私は通院してたクリニックのBGMがオルゴールだったから、『この曲なんだったっけ?』って、曲名を当てるゲームみたいにしてた」
ゆかりさん:
「分かる。私も何かしてないとダメだったから雑誌めくってた」
藤岡:
「私も本とかもめちゃくちゃ読んでたっていうか、めくってた」
ゆかりさん:
「読んでない(笑)」
藤岡:
「そう、読んでる人になるの。でも内容なんて全然入ってこない」
ゆかりさん:
「そうそう。何かしてないと頭がどうにかなりそうというか。心を保つのに必死なんだよね」
判定日を待つ時間は、特にその振れ幅が大きかったといいます。

藤岡:
「私、判定日まで2週間あったんですよ。長いじゃないですか。家で検査薬を使うこともできなかった。怖かったから、家で検査して陰性だったら、『ダメなんだ』って思いながら、じゃあホルモン補充はどうするんだろうとか、いろんな悩みが出てきそうで」
ゆかりさん:
「期待と不安が半分半分みたいな感じだったよね」
藤岡:
「そう。症状があると、『これは生理前かな』って思う一方で、『もしかしたら妊娠超初期かも』って調べたりする。でも、そんなの絶対に分からないじゃないですか」
ゆかりさん:
「分からないよね」
藤岡:
「だから、信じてる気持ちと、『これ生理前かも』っていう気持ちが、もうぐちゃぐちゃになってた」
そして、判定日。尿検査を終え、診察室に呼ばれるまでの時間は、忘れられないものになっていました。
藤岡:
「診察室に入って、先生の顔を見るまで、どっちか分からないんですよね。おめでとうなのか、ダメなのか。もう正反対じゃん」
ゆかりさん:
「本当にそう。天と地の差だもんね」
藤岡:
「あの一瞬が本当につらい。判決を待ってるみたいな感じだった」
治療中は、何かをして気を紛らわせたり、考えないようにしたり。それでも、結果を待つ時間には、期待と不安が何度も押し寄せてくる。
二人が話していたのは、治療そのものだけではありませんでした。その時間をどうやって自分の心を保ちながら過ごしていたのかという、当時は言葉にする余裕もなかった部分でした。
『諦めた』ではない。不妊治療を終えたあとも、気持ちは揺れる
不妊治療を終えたあとも、気持ちがすべて整理されるわけではありません。ゆかりさんは治療を36歳頃に終え、その後しばらくは不妊治療とは離れた生活を送っていました。けれど、時間が経ってから、自分の経験が思いがけない形で今の活動につながっていきます。
藤岡:
「治療を辞めて、今は不妊ピア・カウンセラーをやってるじゃないですか。そこまでって、結構時間が空いてたんですか?」
ゆかりさん:
「そうです。治療を辞めたのが36歳くらいで、そこから仕事をしていて。50歳になったときに、あと何年元気に働けるのかなとか、自分にしかできないことって何だろうって考え始めたんです」
そんなとき、新聞で目にしたのが、不妊治療の保険適用についての記事でした。
ゆかりさん:
「経済的な負担は軽くなるけど、心の負担、心のケアが急務っていう内容を見て。これはやっぱり私にしかできないことかもって思ったんです」
藤岡:
「それまで、不妊治療のときにつらかったから活動したいとか、そういうことは考えてなかったんですか?」
ゆかりさん:
「全然。何にも思ってなかった」
藤岡:
「え、すごくないですか、それ!」
ゆかりさん:
「だから、これはもう運命だと勝手に思って。自分も経験してるし、保健師の仕事をずっとやってきて、人の話を聞いたり寄り添ったりすることはできるかもと思って。そこから何ができるんだろうって探し始めた」
治療を終えてから14~15年。ずっと離れていた不妊治療の経験が、新聞の一つの記事をきっかけに、今の活動へとつながりました。
そして、二人の話は「治療を終える」ということにも向かいます。
藤岡:
「でも、実際、不妊治療やって良かったなって、今思ってます?」
ゆかりさん:
「あー!すばらしい質問ですね(笑)!そうだね。して良かったと思う」
藤岡:
「そうなんだ!」
ゆかりさん:
「素直に。やっぱり子どもが欲しかったし、ちゃんとそのことに向き合って治療を頑張ったし。不妊についても夫婦でもちゃんと向き合えたしっていうことで。今、あさみさんにそう聞かれて。やって良かったし、後悔はないです」
藤岡:
「うわー、もうめちゃくちゃかっこいいよ」
ゆかりさん:
「そう?」
藤岡:
「現実として不妊治療をしても授からない人もいる。授かっても授からなくても不妊治療を終えたときに『後悔がない人生が待っている』と思えることは希望になると思う」
不妊治療を終えたからといって、すべてが「よかった」と簡単に言えるわけではない。それでも、ゆかりさんにとっては、子どもが欲しいという気持ちに向き合い、夫婦で治療について考え、何度も選択してきた時間でした。
藤岡:
「治療をやめた人に対して、『諦めた』っていう言葉がよく使われるけど、私はそのニュアンスがちょっと違うと思うんですよね」
ゆかりさん:
「そうだよね。いろんな気持ちになりながら生きてるのも事実だけど、振り返ると、その時にいろんな選択をしてきたことは、それでよかったのかなって思える」
藤岡:
「不妊治療って、何度も何度も自分で選ばなきゃいけないじゃないですか。その選択によって、自分たち夫婦の人生が変わるかもしれない。親の人生も変わるかもしれない。それを自分で選ばなきゃいけないって、めちゃくちゃ重たいなって、ずっと思ってた」
ゆかりさん:
「本当にそうですよね」
治療を終えた今も、子どもがいる人を見て「羨ましい」と思うことはある。けれど、それと同時に、以前はつらかった親戚の子どもたちを「かわいい」「会いたい」と思えるようにもなった。
気持ちが全部なくなるわけではない。ただ、二人は「揺れながらも、その幅は少しずつ小さくなっていく」と話していました。

子どもがいる・いないではなく、『夫婦2人で何をしたい?』を考えてみる
不妊治療を終えたあとも、子どもがいる人を見て「羨ましい」と思うことはある。それでも、今の生活だからこそできることに目を向けると、以前とは少し違った景色も見えてきます。
藤岡:
「今、子どもがいる友達って、まだ子どもが小さいから、すごく大変そうで忙しそうなんですよね」
ゆかりさん:
「そうだよね」
藤岡:
「私、昨日一人で回転寿司に行ったんですよ。夕方5時くらいに行って、20分くらいで食べ終わって、5時半にはもう家に帰って。『子どもがいたら、こんな食べ方できないよな』って思って」
ゆかりさん:
「できない、絶対できないよ」
藤岡:
「そう。自分のスケジュールを最優先して生きていけるんだなって。こういう身軽さは、やっぱりあるのかもって思った」
ゆかりさん:
「そういうのは大きいかもね。私も、早期退職とか子どもがいたらできなかったと思う」
藤岡:
「私も仕事を辞めたしね。いつでも辞められるし、なんなら私、どこか転々としたいなって思ってて。住む場所を」
ゆかりさん:
「それも可能だよね」
藤岡:
「そう。キャンピングカーとかちょっと見てたりするから(笑)」
ゆかりさん:
「そういうのを見ていくのもいいかもしれないね。夫婦2人だからできることを、ちょっと見ていくのもいいね」
子どもがいる人生と、いない人生。どちらがいいという話ではありません。ただ、今の自分たちだからこそ選べることもある。
二人が最後に話していたのは、「子どもがいるから」「子どもがいないから」ではなく、これから夫婦で何をしたいのかということでした。
藤岡:
「それぞれの夫婦で、やりたいことってきっとあるじゃん。だけど、子育てをしてたら『今は違うな』とか、『落ち着いたら』ってなることもあると思う」
ゆかりさん:
「そうだね。タイミングも夫婦それぞれだと思う」
藤岡:
「だから、子どもがいるからとか、いないからとかじゃなくて、『何やりたい?』っていうのを夫婦で話せるって、めちゃくちゃいいですよね」
ゆかりさん:
「そうだね。幸せなことだよね」
藤岡:
「そこがあるから、楽しく生きていけるっていうのもあるかもしれないね」

この話の続きは、ラジオで
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。今回の記事は、妊+のstand.fm『妊活すっぴんトーク』で配信した内容をもとに編集しました。
実際のラジオでは、「そうだね」「分かる」と何度も共感しながら、ときには笑いも交えて、二人がそれぞれの経験や気持ちを話しています。文章だけでは伝わりにくい、声の温度や会話の間も、ぜひ感じてみてください。
今回の話の中で印象に残ったのは、「子どもがいるから、いないから」ではなく、「何やりたい?」と夫婦で話せること。
今、自分は何を感じているのか。これから、どんなふうに過ごしていきたいのか。
そんなことを少し考える時間になれば嬉しいです。
実際の二人の声で聴くと、また違ったものが見えてくるかもしれません。ラジオを聴くような気持ちで、二人の会話もゆっくり聴いてみてください。😊
放送回へ飛ばない時は2回タップ
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一人で考え続けるより、誰かと話してみませんか?
今回のラジオのように、話してみて「私も同じ」と思える人と話せることがあります。
一人で考えていると、同じことを何度も繰り返し考えてしまったり、モヤモヤの正体が分からないまま苦しくなったりすることも少なくありません。
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