不妊治療をやめた私たちが、今だから話せる話

不妊治療をやめた私たちが、今だから話せる話

この記事は、妊+のstand.fm『妊活すっぴんトーク』で配信した内容をもとに、読みやすく編集したものです。

今回のゲストは、新潟県で妊活サロンを運営する高橋まさよさん
お互いに20代後半から不妊治療を経験し、子どもを授かることなく治療を終えたという共通点があります。

話してみると驚くほど共通していたのは、妊娠報告に涙したこと、原因が分からず「なんで私だけ」と悩み続けたこと、そして誰にも頼れず、一人で抱え込んでいたこと。

一方で、治療を終えた今だからこそ見えてきた景色もありました。

「あの頃は想像もできなかったけれど、時間が少しずつ気持ちを変えてくれた。」

そんな二人のリアルな体験をお届けします。
ラジオを聴くような気持ちで、ゆっくり読んでいただけたら嬉しいです。

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20代から不妊治療をして子どもがいない2人

藤岡:
「今日は、新潟県で妊活サロンを運営している高橋まさよさんをゲストにお迎えしました。よろしくお願いします!」

まさよさん:
「よろしくお願いします。私は20代後半から不妊治療を経験してきました。人工授精も体外受精も経験したんですが、一度も陽性反応を見ることがありませんでした。仕事と治療の両立もうまくいかず、心身のバランスを崩してしまって…

『私みたいな女性を増やしたくない』

そんな思いから、今は妊活サロンを運営しています」

藤岡:
「お話を聞いていて思ったんですけど、私たちすごく似てますよね。私も20代後半から不妊治療を始めて、体外受精まで経験して、今は子どもがいません。大きな流れがすごく似てるなって思いました」

まさよさん:
「本当にそう思います。子どもがいない中でも、不妊治療の経験を活かしたいという思いだったり、同じように悩んでいる方の力になりたいという気持ちだったり。あさみさんとは通じるものがあるなと思っていました。今日はお話しできるのを楽しみにしてきました」

藤岡:
「私もです。実は、治療を終えたあとって、【この経験をどう受け止めたらいいんだろう】って考える時間が長かったんですよね。でも今は、この経験があるからこそ話せることがあるし、分かり合える人がいるんだなって思います」

まさよさん:
「そうなんですよね。私も【あの経験があったから今がある】と思えるようになってきました。もちろん、治療中はそんなふうには全然思えませんでしたけど…」

藤岡:
「そうそう。だから今日のラジオは、治療中には話せなかったことも、今だから話せることも、全部そのままお話しできたらいいなと思っています」

実際に話し始めてみると、「それ私も」「分かる」が本当に多くて。

中でも一番盛り上がったのが、妊娠報告を受けたときの気持ちでした。

トイレでひとり、泣いた日

まさよさんと話していて、驚くほど共通していたのが、妊娠報告を受けたときのことでした。

職場での妊娠報告、友人からのLINE、家族からの知らせ。

「おめでとう」と言わなければと思う一方で、自分の心は簡単には追いついてくれない。そんな経験を、二人ともしていました。

藤岡:
「まさよさんと話していて、すごく「分かる」と思ったのが、妊娠報告を受けたときのことなんです」

まさよさん:
「ありますよね。私も、職場で後輩から「妊娠しました」って報告が来たとき、本当にプツンと糸が切れたみたいになってしまって。

それまで仕事もして、不妊治療もして、なんとか頑張っていたんですけど、体外受精もうまくいかなくて。そのタイミングでまた妊娠報告が来て……

もう涙が止まらなくなって、眠れなくなって、仕事にも行けなくなってしまいました」

藤岡:
「分かるよ。私も、仕事中に妊娠報告を見て、トイレに駆け込んで泣いてました」

まさよさん:
「本当に一緒。グループLINEとかで、『妊娠しました』って来るじゃないですか。それを見た瞬間に、『あ、私だけ乗れない』って感じがして、すごくきつかった。周りにスタッフがいるから、急いでトイレに行って、そこで泣いて……

おめでとうって返すだけなのに、すごく時間がかかるんですよね」

藤岡:
「そうそう。『おめでとう』って言いたくないわけじゃないんですよね。ちゃんとおめでとうって思う気持ちはある。でも、その前に一回、自分の気持ちを落ち着かせないといけない。だから、ちょっと泣いて、落ち着いてから、ようやく『おめでとう』って返す」

まさよさん:
「おめでとうは言うんだけど、その前に自分の気持ちを整理する時間が必要なんですよね」

友人からの報告だけではありません。家族やきょうだいからの妊娠報告は、距離を置くことが難しい分、さらに複雑な気持ちになることもありました。

藤岡:
「友達だったら、少し距離を置くこともできるじゃないですか。でも家族って、距離を置くのが難しいですよね。私は、姉から3人目の妊娠報告が来たときは、すごくきつかったです。

『もし自分が妊娠していた子が生まれていたら、絶対に同じくらいの年齢だった』

そう思ってしまって。

『なんでお姉ちゃんには3人もいるのに、私は一人も産めないんだろう』って。

姉が悪いわけじゃないんです。でも、タイミングが本当にきつかったんですよね」

まさよさん:
「タイミングって、ありますよね。こっちが見たくなくても、家族からのLINEみたいに、避けられない情報もある。SNSなら見ないようにすることもできるけど、家族や身近な人からの報告は、突然届いてしまう。だから、悲しいときはもう、悲しむしかないのかなって、最近は思います」

藤岡:
「それが一番いいのかもしれないね。『悲しい』っていう気持ちの裏には、『悔しい』とか『いいな』とか、いろんな気持ちも混ざっていますもんね」

まさよさん:
「『うちに来てくれたら、絶対幸せなのにな』って思ったりもする。なんで私のところには来てくれないんだろうって」

藤岡:
「分かる。いろんな感情が混ざってるんですよね。でも、そういう気持ちって、なかなか人には言えない」

まさよさん:
「言えないですよね。だからこそ、今振り返ると、あの頃は本当に一人で抱えていたんだなと思います」

不妊治療中は、悲しみだけではなく、悔しさや羨ましさ、理不尽さまで、さまざまな感情が重なります。

そのどれもが「感じてはいけない気持ち」なのではなく、治療を続けながら何度も喪失を経験してきた中で生まれた、二人の正直な気持ちでした。

「原因が分からない」が、一番苦しかった

妊娠報告の話から、治療中にどんなことをしていたのかという話へ。ここでも、二人には驚くほど共通する部分がありました。

それは、原因が分からなかったこと

検査をしても大きな問題は見つからない。それでも妊娠しない。

だからこそ、「何か原因があるはず」と、可能性のあるものを一つずつ探し続けていました。

まさよさん:
「あさみさん、不妊の原因って不明でした?」

藤岡:
「原因不明です」

まさよさん:
「私も原因不明。だからこそ、可能性に全部すがっちゃってたんですよね」

藤岡:
「めちゃくちゃ分かる。「これがダメ」っていうものがなかったら、逆に全部100点を取らなきゃいけないんじゃないか、みたいな気持ちになって」

まさよさん:
「そうそう。いっそのこと、どこかに原因があってほしかったですよね。『これをやれば結果が出る』って分かっていた方が、気持ちを保てた気がする」

藤岡:
「本当にそう。分からないから、『なんで?なんで?なんで?』ってずっと考えちゃうんですよね。

まさよさん:
「何がいけないんだろう、何が悪いんだろうって。こんなにやっていてもできない。じゃあ、何が原因なの?毎回、原因探しをしている感じでした」

原因が分からないからこそ、『これをやったら妊娠できるかもしれない』という可能性を手放すこともできませんでした。

サプリメントや漢方、お茶など、体に良いと言われるものを試したり、治療以外にもできることを探したり。

藤岡:
「サプリとかも、いろいろやりましたよね」

まさよさん:
「やったやった。漢方のお茶を定期購入したり、サプリも定期購入したり。子宮内膜を整えるためのサプリみたいなものもやりましたよね」

藤岡:
「私も」

まさよさん:
「あれ、結構高かったですよね」

藤岡:
「高かった。一粒400円くらいでしたよね」

まさよさん:
「そうそう。月1万円を超えることも普通にあって。でも、体外受精の治療費を考えると、『これくらいなら安いよね』みたいな、ちょっとおかしな金銭感覚にもなっていました。しかも、やめられないんですよねこれをやめたら妊娠できなくなるかもしれない、って思っちゃう」

藤岡:
「もしかしたら、これをやっていたからできたのかもしれない、って思うから、やめられないんですよね」

そして二人には、もう一つ共通していたことがありました。

生理不順に悩んでいたわけでもなく、体温もきちんと上がる。パートナーの検査にも大きな問題はない。

それでも、なぜか妊娠しない。

まさよさん:
「私たち、生理不順にも悩んでなかったですよね」

藤岡:
「ないないない。私も、生理不順に悩んだことがない。体温もちゃんと上がるし」

まさよさん:
「ちゃんと上がって、毎月ちゃんと生理も来る。『じゃあ、何が原因なの?』ってなりますよね」

藤岡:
「夫にも、原因はなかったです」

まさよさん:
「私も。多少少ないくらいで、特に問題ないって言われてました」

藤岡:
「胚盤胞もグレードがすごく良くて、先生にも褒められたんですよ」

まさよさん:
「私も胚盤胞は良かった。内膜も厚かった。『なんで着床しないの?』っていう感じでしたよね」

藤岡:
「先生も困ってましたもんね」

まさよさん:
「なんでかな?みたいな。こっちが聞きたいわ、みたいな(笑)」

二人とも笑いながら話していましたが、その背景には、何をしても答えが見つからなかった治療中の苦しさがありました。

そして、そんな二人が特に傷ついた言葉がありました。

それが、「若いんだから大丈夫」という言葉です。

藤岡:
「『まだ若いんだから』って、結構きませんでした?」

まさよさん:
「きました!」

藤岡:
「『若いのにできない自分って、もうダメじゃん』って思っちゃった。若さっていう武器があるのに、それでもできないんだって思ってしまって。だから、その言葉がかえって絶望につながってしまうこともある」

まさよさん:
「だから私は、不妊治療をしている人に『若いから大丈夫』っていう言葉は、かけないようにしています」

「何がいけないんだろう」と原因を探し続けることも、「これをやめたらダメになるかもしれない」と可能性にすがることも、当時の二人にとっては、それだけ妊娠を望んでいたからこその行動でした。

「これは私の人生」と思えるようになるまで

不妊治療をしているときは、「子どもがいる人生」だけを目指して走っていた二人。

でも、治療を終えて時間が経つにつれて、少しずつ気持ちに変化が生まれていきました。

子どもがいる友人の話を聞くことも、以前ほど怖くなくなってきた。

「もし子どもがいたら」という気持ちがなくなったわけではありません。

それでも、「私は私の人生を歩んでいる」と思える瞬間が、少しずつ増えていったのです。

藤岡:
「まさよさん、今は子どもがいないことについて、どんなふうに感じています?」

まさよさん:
「やっぱり、今でもざわざわすることはありますよ。赤ちゃんを見たらかわいいなって思いますし、『もしかしたら、こういう人生が私にはあったのかな』って、たらればを考えることもあります。

でも、今は子どもがいる人生ってこんな感じなのかなとか、子どもがいる人も、それぞれ大変なんだなって思えるようになりました。

私はその人生を味わえないかもしれないけれど、今の自分の人生も楽しいし、これでいいかなって」

藤岡:
「それ、すごくいいですね」

まさよさん:
「そう思えるようになったのは、去年くらいからですかね。以前は、子どものいる友人たちと会うことも少し避けていたんです。『誘っていいのかな』とか、『子どもがいるし、私と会うのは気を遣わせるかな』とか、いろいろ考えてしまって。

でも、久しぶりに大学時代の友人たちと集まったとき、私以外はみんな子どもがいたんです。そこで子育ての話を聞いていても、全然嫌じゃなかった。

『こういう人生もあるんだな』って思えたし、『私の今の仕事にも活かせるな』と思えたりして。

そこで初めて、『私は私の人生なんだな』って、すっと入ってきた感じがありました」

藤岡:
「私も、ちょっとずつですけど抜けてきました。前だったら、友達に子どもが生まれたって聞くのが怖くて、たぶん会いに行かなかったと思うんです。でも今度、地元の友達と久しぶりに会う予定があって。子どもが増えているかもしれないし、そういう話もきっとあると思う。それでも、今回は楽しみなんですよね」

まさよさん:
「すごいですね」

藤岡:
「もちろん、何も感じないわけではないんです。『私は違う人生なんだな』って思うこともあります。でも、その違いを少しずつ受け入れられるようになってきた。

『これは私の人生なんだ』って、自分の中で納得できるようになってきたのかもしれません」

そして、二人が今の自分の人生を受け入れられるようになった背景には、やっぱり時間もありました。

藤岡:
「私、治療をやめて4年経つんですけど、最初の頃はめちゃくちゃ揺れてました。治療をやめたのに、サプリを飲んでいたり、まだどこかで期待していたり。でも4年経ってみたら、今の生活がすごくしっくりきてるんですよね。もちろん、子どもができたらうれしい。でも、そこへの執着は本当になくなりました」

まさよさん:
「私もそうですね。今のライフスタイルがすごく自分に合っているんです。もし子どもがいたら、今みたいに好きなことができていないかもしれない。もちろん、もし授かったら、それはそれですごくうれしい。

でも、今はそこにすごく執着することがなくなりました。むしろ、不妊治療を経験したから今の自分があると思うと、『すごくいい経験だったな』と思えるようになりました」

治療中は、そんなふうに思える日が来るなんて想像もしていませんでした。

それでも、すぐに気持ちを切り替えられたわけではありません。

二人とも、何年もの時間をかけて、少しずつ自分の人生を見つめ直してきました。

藤岡:
「不妊治療の経験って、今はまだ『人生の彩り』なんて思えない人もいますよね。私自身も、当時はそんなこと全然思えなかった。今は思えなくてもいいと思うんですよ。『いつか』そうなれたらいい。

不妊の経験だけが人生のすべてじゃないし、今までのいろんな経験が自分の人生を彩っている。その一部として、不妊治療の経験もいつか彩りになるかもしれない。そんなふうになれたらいいなと思っています」

「今はそう思えなくてもいい」

その言葉は、今まさに治療中の人にも届けたいです。

無理に前向きにならなくてもいい。
今の自分の気持ちを、そのまま抱えていていい。
時間が経ったときに、少し違う景色が見えてくることもある。

そんなことを、二人で話しながら感じた時間でした。

「話すこと」が、心を少し軽くしてくれた

ここまで話してきたように、不妊治療中には、妊娠報告に傷ついたり、原因が分からず悩み続けたり、誰にも言えない気持ちを抱えたりすることがあります。

そして、その気持ちは、時間が経ったからといって、すぐになくなるものでもありません。

だからこそ、最後に二人が話したのは、「話すこと」の大切さでした。

藤岡:
「今日こうやって、まさよさんと自分たちの経験を話していて、やっぱり「話すって癒されるな」って思いました。なんだろう、話すことで自分自身のことも肯定しているような気持ちになるし。

それに、『そうだったんだね』とか『そうだよね』って聞いてもらうことで、そこでまた人に肯定してもらえる。

二段階で癒される感じがあるのかもしれないですね」

まさよさん:
「確かに。私も、自分の過去を話すことで、過去の自分を癒しているような感覚があります。だから、抱え込まずに言ってみてほしいですよね。

『今、悲しいんだ』とか、『今、つらいんだ』って。

そこをちゃんと聞いてもらえるだけでも、少し違ってくると思うんです」

藤岡:
「本当にしんどくて溺れそうな人って、『助けて』っていうSOSすら言えないことがあるんですよね。溺れそうなときって、一生懸命息をすることだけで精一杯だから、『助けて』なんて言えない。

だから、待っているだけじゃなくて、こちらから一歩踏み込むことも必要なんじゃないかなって。

『大丈夫?』って声をかけてみるとか。

そういう行動も、私たちはしていきたいなと思っています」

まさよさん:
「そうですよね。『助けてって言えたんだったら、言ってるよ』っていう人も、きっとたくさんいる。だからこそ、自分から言えない人に対して、こちらから話しかけることも大事なんですよね」

藤岡:
「そう思います」

まさよさん:
「私自身も、昔は頼れなかったんですよ。『自分で何とかしなきゃ』って思ってしまって。『こんなこと言ってもいいのかな』とか、『頼っても無駄なんじゃないか』って思っちゃうんですよね。

だから、今は自分自身に対しても、『頼っていいんだよ』って思えるようになりました」

「私も同じだった」と思える人がいる

今回の対談で何度も出てきたのは、「私も同じだった」という言葉でした。
妊娠報告に涙したこと。原因が分からず悩み続けたこと。少しでも可能性があるならと、すがり続けたこと。

そんな過去を二人で話す中で、「あの頃の自分だけじゃなかった」と気づくことができました。

今、つらいなら無理に前向きにならなくていい。
悲しいときは、悲しいままでいい。

でも、もし話せる人がいるなら、ほんの少しだけでも気持ちを話してみてください。

「分かるよ」と受け止めてもらうだけで、心が少し軽くなることがあります。

この対談が、「私も誰かに話してみようかな」と思えるきっかけになればうれしいです。


この話の続きは、ラジオで

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。今回の記事は、妊+のstand.fm『妊活すっぴんトーク』で配信した内容をもとに編集しました。

実際のラジオでは、「私も一緒!」「わかるー!」と、二人で笑いながら本音を話している空気感を感じていただけます!

「子どもがいなくても大丈夫」
そんな風に思えるようになった流れを、ぜひラジオでも聴いてみてください。

きっと、あなた自身の気持ちを見つめる時間にもなるはずです😊

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一人で考え続けるより、誰かと話してみませんか?

今回のラジオのように、話してみて「私も同じ」と思える人と話せることがあります。

一人で考えていると、同じことを何度も繰り返し考えてしまったり、モヤモヤの正体が分からないまま苦しくなったりすることも少なくありません。

妊+では、不妊治療を経験したカウンセラーによる無料の「はじめて相談50」をご用意しています。

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